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バイトダンスの北京本社の会社員聞く、なぜティックトックは面白い動画が多いのか?「TikTok、最強のSNSは中国から生まれる」(黄未来)

■ティックトックの概要と強みとは
ティックトックは2016年9月にリリースされて、その2年後の2018年には、世界で最も多くダウンロードされたアプリになった。現在150以上の国で展開されていて、ユーザ数は5億人となっている。ティックトックは単なるブームを超えて、世界的なSNSとして定着した。

ティックトックが人気になった理由の5つ。
A.「テキストや画像から動画へ」という長期トレンドに沿っている
最初に現在のSNSの利用動向を見る。ICT総研が2018年に行ったSNS利用率の調査を見ると、現時点ではラインやツイッターなど、テキストをベースとしたSNSが多く使われていると言える。だが、満足度で見ると、順位に変動が起こっていて、ユーチューブやインスタグラムやティックトックが上位に上がっている。テキストより画像、画像より動画のコンテンツが好まれる傾向になっている。人間は他人とのコミュニケーションを求めてSNSをしているため、そこで得られる情報はリアルに近いほど、満足度が高くなると言える。

B.検索からレコメンドへという長期トレンドに沿っている
ティックトックの大きな特徴はレコメンド機能の強さである。バイトダンス社が誇る強力な機械学習の技術が、視聴者ごとに最適化された動画をオススメしてくれる。そして、ユーザがティックトックを使えば使うほどに、その精度は高くなる。さらにティックトックは画面をスワイプすると、すぐに次の動画になり、動画終了後には自動でリピートという設計になっていて、ユーザに次々と動画を見せる連続性も優れている。

これと比べると、ユーチューブは動画途中で全く関係のないCMが挿入されれていたりして、連続視聴を妨げる要素がある。ティックトックの場合はCM動画すらも完全にコンテンツに溶け込んでいるため、視聴体験を中断される感覚がほぼない。これによって、ユーザが圧倒的に夢中になってしまう中毒性が生まれている。

最近までインターネットで情報に接する際に、ユーザが取る行動はまず検索であった。現在起きていることは、その検索がレコメンドに変わろうとしているという大きな潮流の変化である。

C.プラットフォームとして確固たる強みがある
SNSが一過性のブームで終わってしまうのかどうかを判断するためには「そのプラットフォームの強さの核がどこにあるのか」が重要になる。ティックトックの場合、レコメンド機能の背景にある機械学習の技術が世界一のレベルにあるということが、大きな差別化になっている。ティックトックは優良なコンテンツを評価して、適切なユーザに届けるという理念の基に設計されている。このため、始めたばかりのフォロワーの少ないユーザのコンテンツであっても、平等に一定量のアクセスが流れるようになっている。そこから、コンテンツのいいね数やシェア数や視聴完了率などの評価を分析して反応が良ければ、さらに大きなアクセスを流すといった仕組みになっている。

このレコメンドの精密さに関しては、GAFAやテンセントやアリババなどの世界トップ企業と比べても、さらに一段高い技術力を誇っている。これは、バイトダンスという会社が、創業当初から機械学習という一点に集中して技術を磨いてからこそ生まれた強みである。

そして、そこには中国固有の事情もある。世界的な流れとしては、ヨーロッパのGDPRを始めとして、個人情報の保護意識が高まっている。だが中国の場合は「便利になるのであれば、個人情報をプラットフォームに積極的に提供する」という考え方の人が多数派である。中国では全ての国民にID番号が付与されていて、身分証を持つことが義務になっている。この身分証は、公的な施設の利用や飛行機に乗る時の本人確認に使われて、日常的に利用履歴が吸い上げれられてるため、個人情報は自分のものという意識が希薄である。これは、大量のユーザデータを必要とする機械学習をベースにしている、ティックトックとっては大きな優位性となる。

D.母体となる運営会社の実力が凄すぎる
ティックトックの運営母体であるバイトダンスは、2018年に時価総額8兆円を突破し、当時トップにいたウーバーを超え、世界一のユニコーンになった。また、従業員数はAIエンジニアを含めて3万人以上で、平均年齢が20代と若いことが特徴である。バイトダンスは2012年頃から、データサイエンティストの精鋭を集めながら、ビックデータや機械学習の領域に経営資源を集中していた。アリババやテンセントがこの分野を重視し始めた時期が、2014年頃からであることを考えると、バイトダンスがいち早く行動し、先行者優位を築いていたことが分かる。

E.SNSよしての設計・運営戦略が優れている
ティックトックを使い始めると、その圧倒的な見やすさが印象に残る。この最大の理由は、動画の長さにある。ユーチューブで最適とされる長さは5〜8分であることに対して、ティックトックは僅か15〜60秒である。ティックトックでは、ある程度ファンを獲得したユーザのみ、1分以上の動画投稿を許可する仕組みになっている。このため、ティックトックの中にある動画は、気軽に見られる15秒の動画と、クオリティの高い1分以上の動画だけがある状態になる。コンテンツが短い動画に決められているということは、投稿者にとってはアップロードするハードルが低いということも意味する。

またティックトックでは、初期に流行した口パクに代表されるように、既存のコンテンツを真似することが歓迎されるという、ショートムービならではの文化があることも重要なポイントである。既にある動画をアレンジして真似するだけなら、投稿するネタに困ることもない。スマホだけで映像編集もでき、いつでもすぐに投稿できるという手軽さが、中高生の人気を得た大きな理由であった。

TikTok、最強のSNSは中国から生まれる」(黄未来)