任天堂Wii企画担当者に聞く、マリオやドラクエに夢中になってしまう理由とは?「ついやってしまう体験のつくりかた、人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ」(玉樹真一郎)
■直感のデザイン
マリオに夢中になる思考パターンである「直感のデザイン」とは、3点ある。売れているゲームは、どのゲームも採用している。
A.仮説
人間は自発的に「〇〇するのかな?」という仮説を立てている。マリオの場合は、右に進めば良いのかな、誰か出てくるのかな、など。
B.試行
自発的に「〇〇してみよう」と試しに行動を起こすことである。マリオの場合は、クリボーが現れたから、ジャンプしてみようかな、など。
C.歓喜
「〇〇で正解だった」と歓喜すること。仮説から歓喜まで辿って、初めて仮説と試行が正しいと確信する。マリオの場合、ゲームスタートからクリボー登場の10秒間で、これだけの体験デザインされている。
直感のデザインを作るためのポイントとして、3点ある。
A.ある程度長い時間を、直感のデザインで埋める
早くて数分、長くて数十分かける。
B.各自の直感のデザインを短く完結させる
個々の仮説をプレイヤーがゲームを辞めるまでに完結させる。マリオの場合、クリボーを倒す、キノコを取るなど。
C.個々の直感のデザインにおいて、プレイヤーが歓喜に辿り着く確率を高める(シンプルで、簡単な、デザインにする)
人間がゲームをプレイする理由は、ゲームが楽しいのではなく、プレイヤー自信が直感する体験、「仮説・試行・歓喜」の流れが面白いから遊ぶ。
■驚きのデザイン
直感のデザインだけでは、ゲームに満足できない。この理由は、同じような体験が続くと、疲れと飽きがあるため。この根拠は、脳は同じ刺激が何度も続くと、反応が徐々に弱まっていくため。このため、ドラゴンクエストでは「パフパフ」などで、予想が外れるという体験をさせる。これで、長時間の体験をデザインする重要なテクニックである。つまり、予想から外れる体験を意図的にゲームに入れることを「驚きのデザイン」と呼ぶ。
驚きのデザインの流れとは。
A.誤解
「〇〇するのかな」と誤った仮説を立てる。この段階ではプレイヤーは仮説を正しいと思い込んでいる。マリオの場合、クリボーはジャンプすると倒せる。
B.試行
「〇〇してみよう」この段階でも、プレイヤーは自分の試行が正しいと思い込んでいる。
C.驚愕
自発的に「〇〇は間違いだった」と驚くこと。このタイミングで、初めて仮説と試行が誤りだと気が付く。直感のデザインの連続で、疲れと飽きが溜まったプレイヤーに対して、疲れと飽きを解消して、より長時間の体験をさせることができる。
この驚きのデザインを設計するポイントは、3点である。
A.疲れや飽きのタイミングを見極めること
ドラクエの場合、8つのコマンドを学習を終えた頃など。
B.誤解に導く世界観を事前に構築すること
C.誤解が明らかになる演出をデザインする
思い込みを同時に裏切る演出をする。
「ついやってしまう体験のつくりかた、人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ」(玉樹真一郎)(Wiiの企画担当者)